リー・モーガンとジャズロック風のビートは相性がいい。
それは、ジャズロックの走りと呼ばれる
『ザ・サイドワインダー』以来培ってきた
彼流の、リズムに対してのアプローチがあるからだ。
特に、高音でパラ・パラ・パラとリズミックにくり返されるフレーズは、
ジャズロック、というよりは、
4ビートの面影を微妙に残したビリー・ヒギンズが叩き出す柔らかいビートに対して、垂直に切り込み、リズムとの抜群のコンビネーションを見せる。
ハンク・モブレイがジャズロック風テイストに挑んだ『ア・キャディ・フォー・ダディ』。
ここでもリー・モーガンは大活躍。
人によっては、「また、あのフレーズか」と食傷気味になるかもしれないが、タイトル曲で先発を決めるリー・モーガンの一発目のフレーズが私は好きだ。
これは、《ザ・ランプローラー》など、モーガンがジャズロック・リズムで演奏している曲で散見されるフレーズだが、このフレーズほど、ジャズロックという漠然として形容を具現化させるものもない。
そして、フレーズのみならず、彼が本質的に持っているアタックの強さと、軽やかさが、ジャズロックのビートと見事に合致するのだ。
そして、このアルバムのリーダー、モブレイも意外や意外、ジャズロックテイストのリズムと見事なマッチングをみせる。
柔らかい音色、スムースなフレージング。
そのかわり、アタック感は弱いモブレイの“柔らかいテナー”。
しかし、この柔らかさが、ジャズロックのリズムと絶妙に溶け合っているのだ。
フレージングにも鍵があるのだと思う。
甘くスムースなモブレイのフレージングは、縦が強調されたリズムに対して、横の軸で流れてゆく。
特に、タイトル曲のモブレイのアドリブは、リズムフィギュアを引き立てるような工夫が随所に施されている。
少し長めのトーンを駆使したり、あるいは、ひとつの短い旋律を反復させたり、と。
それでいて、スタイルが激変しているわけでもなく、ハードバップを吹く“いつものモブレイ”を聴いている感覚で親しめるのだから面白い。
アドリブの切れや、インパクトは、リー・モーガンに2〜3歩譲るタイトル曲だが、そんなモブレイだって、さすがリーダー、よく聴けばかなり細かいニュアンスに気を使っていることが分かる。
リー・モーガンのリーダー作でも演奏されている《ヴィーナス・デ・ミロ》は、こちらでも再演されている。
ユーモラスで、ちょっと素っ頓狂な音の跳躍が楽しいこの曲、モブレイとモーガンのコンビネーションは抜群だ。
ピアノは、コルトレーンの元を去った直後のマッコイ・タイナー。
最初、何も考えずに聴いていたときは、ピアニストはハロルド・メイバーンあたりかな? などと思ってパーソネルを見たら、なんとマッコイだったので驚いたことがある。
キャッチーなスリーコードジャズロックのタイトル曲は、頻繁に聴きすぎると飽きるのも早いかもしれないが、タイトル曲は、このアルバムのコマーシャルな部分。
モブレイやモーガン、ヒギンズらの本領発揮はむしろ2曲目の《モーニング・アフター》だろう。
とにもかくにも熱い!
もちろんタイトル曲も悪くはないが、この曲だけをもってして、このアルバムの印象をキャッチーなモブレイとして片付ける前に、是非、大音量で《モーニング・アフター》にも耳を通してほしい。
●アルバム
A CADDY FOR DADDY
●レーベル
Blue Note
●リーダー
Hank Mobley
●収録曲
Caddy for Daddy
Morning After
Venus Di Mildew
Ace Deuce Trey
3rd Time Around
●パーソネル
Hank Mobley (ts)
Lee Morgan (tp)
Curtis Fuller (tb)
McCoy Tyner (p)
Bob Cranshaw (b)
Billy Higgins (ds)
●録音日
1965/12/18
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